新世界・西成あいりん地区は治安が悪いのか?
前回『天神橋筋商店街のグルメ、大阪くらしの今昔館をレビュー』の続き。
「新世界や西成あいりん地区は治安が悪い、危険だから行かないほうがいいよ」大阪出身の友人からそう聞いていた。特にあいりん地区はインターネットの記事やYouTube動画などではスラムと表現されることがある。本当なのか?気になっていたので、2025年9月の大阪旅行で実地調査してきた。結論は以下だ。
- 新世界はウィキペディアによると1990年代までは治安が悪化していたようだが、2025年9月時点でその面影は無く観光地化している
- ドヤ街ならではの「治安の悪さ」を感じたが、「西成あいりん地区はスラム街」は誇張表現である
- ただしあいりん地区は「夜間の一人歩き」や「怪しい雰囲気の店」は避けたほうがいい
今回は新世界と西成あいりん地区を観光した僕の体験記から「街の雰囲気や治安」についてレポートする。また通天閣に入場する注意点や「たこ焼きの食レポ」についても記述する。
新世界・通天閣を観光し「たこ焼き屋」へ
「大阪くらしの今昔館」は予想よりも長時間滞在してしまい時刻は15時半近く。今日中に東京に帰るため時間は限られていたが、まだ大阪観光をしたい。
「恵美須町駅」に到着し「新世界」を街ブラ
「大阪くらしの今昔館」の最寄駅「天神橋筋六丁目駅」から大阪メトロ堺筋線に乗り、12分ほどで新世界の最寄駅「恵美須町駅(えびすちょうえき)」に到着。
「新世界市場」の入り口には、外国人観光客らしきカップルがベンチに座っており、どことなくエスニックな雰囲気が漂っている。「通天閣コロッケ」って美味しいのかな?食べてないから分からないけど。中に入ってみると屋台が立ち並んでいて、昼飲みをしている人がちらほらいる。
恵比寿町駅を振り返った方面からの「通天閣本通商店街」の風景。外国人観光客や大阪地元民と思われる人、普通のカップルなどが、休日を楽しんでいる様子。昔から営業している古き昭和の洋服店や喫茶店なんかもあり、伝統ある商店街・観光地といったおもむき。治安の悪さは皆無である。
通天閣入場の注意点:チケット売り場と展望台入り口は別の場所
通天閣の展望台に登るには地下にある「チケット売り場」でチケット購入した後に、地上の「展望台入り口」に並ぶ手順を踏む必要がある。僕はそれを知らずにチケット未購入のまま「展望台入り口」に並んでしまい、気づいた時には、当日券を買うには時間が遅すぎて入場できなかった。
これは2025年9月の土曜日の16時過ぎの出来事で、当日の状況次第で入場できる可能性もあるが、入場チケットは「通天閣公式サイト」で事前予約して、早い時間帯に訪れたほうがいいだろう。入場すると大阪の風景以外にもエンタメがあり、公式サイトを見ると「Dive&Walk」とか楽しそうだ。
展望台に登るのを諦めて、「なにわのエッフェル塔」とも呼ばれる通天閣の外観を観賞する。「日立も出てる、大阪・関西万博!」の広告、万博公式キャラクター「ミャクミャク」が可愛らしい。2025年の最大のイベントは「大阪・関西万博」であり、大阪はどこもかしこも万博一色だ。
新世界たこ焼き「かんかん」を食レポ
軽食をつまみながらビールでも飲みたいので、飲食店を探す。新世界はとにかく「串カツ屋」が多い。あたりを見渡すと「串カツ屋」ばかり目について迷ったけど、大阪旅行に来たら「たこ焼き」だろうと、インターネットで美味しいと評判がいい「新世界かんかん」へ。
たこ焼き一皿8個で450円(2025年9月時点)でリーズナブル。食べるとトロッとした食感で美味しい。
西成あいりん地区を体験レポート
たこ焼きを食べた後、帰りの東京行き新幹線まで時間があったので、新世界に隣接する「西成あいりん地区」に足を踏み入れることにした。
西成あいりん地区は、言わずと知れた全国的にも有名なドヤ街で、かつて「釜ヶ崎(かまがさき)」と呼ばれ過去に何度も暴動が起こっている地域だ。一部のネット記事やYouTube動画では「日本のスラム」などと呼ばれる。恐ろしい。
新世界から西成あいりん地区の行き方
浪速区(なにわく)新世界の南東部にある「ジャンジャン横丁(南陽通商店街)」を通過し、JR線高架下を通り抜けると、動物園前駅2番出口やJR新今宮東口に位置する「西成あいりん地区」に入る。
新世界の観光地的な雰囲気からガラッと空気感が一変した。退廃的で危険な風の香りがする。道端でゴザを広げる露天商が廃品回収品らしきものを並べている。どことなく異常な風景に見える。
動物園前一番街
通りを渡ると動物園前一番街。この辺りは浪速区、天王寺区と隣接し「天王寺動物園」があるため、動物園前一番街という愛称がついたようで、正式名称は飛田本通商店街(とびたほんどおりしょうてんがい)。西成区太子と山王の境界を通るアーケード商店街だ。象やキリンなどの動物の看板が本来は可愛らしいはずなのだが、少し不気味。
大阪・関西万博の旗に、2025年で誕生100周年を迎えた西成区と書かれており、一見すると普通のシャッター商店街に見えるが、怖そうな人たちがチラホラ見える。ここはヤバいとこだと直感する。食堂や洋品店もあるが、外国人女性店員がいるカラオケ居酒屋・スナックがやたら目につく。
動物園前一番街の端には、コワモテ男性と、店員女性、錯乱したゴミが混在しており「場末の歓楽街」といったアングラな空気感が漂っている。
動物園前二番街
「動物園前二番街」の入り口。かつて南海電気鉄道天王寺支線の「飛田本通駅」があり、1993年(平成5年)に廃駅になった跡地。
この看板は何だ?落書きに混じって強烈なメッセージが。「居酒屋で○○○を売るな!」「男になりたいならホストと闇バイトはするな!」これには驚愕。見た瞬間にこの商店街にあるカラオケ居酒屋がどんな店なのか、よく分かった。もちろんこの看板のメッセージが該当する店は一部だと思うが。そう信じたい。
Googleでネット記事を検索してみると、やはりそれなりの事情があって設置された「西成の名物看板」のようだ。こんな看板は今まで日本のどの街でも見たことはない。日本は世界でも有数の治安がいい安全な国ではなかったのか。
ただ道は清掃が行き届いており異臭などは皆無。店頭には商品が普通に陳列されている普通の商店街という雰囲気。歩いている人はたまに「清潔感がない人」がいる程度で、たいていは一般の人々である。
左手の波板フェンスに多少の治安の悪さを感じさせるが、渋谷など東京都内の繁華街にもある「普通の落書き」なので驚きはしない。奥には大阪では有名な「スーパー玉出(たまで)」の看板が見える。
新開筋商店街
新開筋商店街(しんかいすじしょうてんがい)。こちらも外国人店員がいるカラオケ居酒屋が多く、メイド居酒屋もある。何とも言えない独特な雰囲気。アーケードの「吊り下げ型看板」の店名と店頭の看板が別の店名のような気がする。昔は普通の地域密着型の商店街であったのが、歓楽街に変化してしまったのだろうか。
日が暮れてくると商店街の街灯が夜を告げてくる。先ほどの看板を思い出し警戒心が高まってくる。
飛田新地
アーケードを抜けて通りを渡ると、かつて大正時代から昭和初期に栄えた「飛田遊郭」の大門跡の石碑があった。現代では「飛田新地(とびたしんち」と呼ばれる花街の入り口あたりだ。
そこで発見したのが「西成警察署飛田連合振興町会」の警告看板である。これはヤバい看板だ。こんなの他の街で見たことないよ。この看板に書かれている犯罪が多発する場所なんだと危機意識が高まる。飛田新地で遊ぶつもりはないし、ここから先に入るのは危険だと感じて方向転換をする。
今池・萩ノ茶屋エリア
今池本通商店街(いまいけほんどおりしょうてんがい)。この辺りは簡易宿泊施設や安宿が多く、まさにドヤ街といった感じである。宿泊料をネット検索してみると考えられないほど安い。バックパッカーに人気地区なのも納得である。
萩之茶屋本通商店街。人通りが少なくガラガラなのが不気味だが、単なるシャッター商店街にも見える。
南海電鉄「萩ノ茶屋駅(はぎのちゃやえき)」、うらぶれた独特な雰囲気。この駅が「あいりん地区(釜ヶ崎)」の中心と言われている駅だ。
「あいりん労働福祉センター」はかつて日雇い労働者の就労斡旋をしていた福祉施設で「寄せ場(よせば)」と呼ばれていた建物。1970年竣工の建物で老朽化が進んでおり、2019年に閉鎖。
ただ閉鎖後も路上生活者が立ち退きをせず建物を占拠。裁判にまで発展し、2024年に立ち退きを強制執行したようだ。2025年9月時点では立ち退きが進み、建物もフェンスで囲われており、独特で圧倒的な存在感を放っている。ニュースによると2027年3月末までには解体工事が完了する予定とのこと。
周辺には仕事の紹介の看板が設置されていた。
西成あいりん地区での注意点
あいりん労働福祉センターから新今宮駅まで歩き、JR大阪環状線で「大阪駅」、JR京都線で「新大阪駅」に行き、「スマートEX」で直前に予約した新幹線で品川、帰宅した。
西成あいりん地区は独特な雰囲気で怖かったが、実際に危険なことは全くなかった。冒頭でも述べたがネットで言われている「西成あいりん地区はスラム」は誇張表現であり、いくつかの注意点を守れば、それほど恐れることはない。僕の独断であるが、西成あいりん地区の注意点をリストにすると以下だ。
- 夜間の一人歩きはしない、特に女性は避けるべき(基本)
- 雰囲気が怪しい店には入らない(ぼったくり被害対策)
- 高級ブランドのバッグや腕時計は身に付けずに、目立たない服装をする
- 道で大声で騒いだりしない、通行人や街を動画撮影をしない
- 財布やスマホなどの貴重品は口が大きく開くバッグには入れない、セキュリティポーチに入れるのが望ましい
このような感じだろう。ただ実際は僕は「腹巻き型のセキュリティポーチ」は持っているが使わなかった。新世界まではデイパックに入れていたスマホと財布を出して、あいりん地区ではズボンの前ポケットに収納しておいた。それで十分であったのだ。
釜ヶ崎が舞台の小説『この女』
東京に戻ってから「西成・あいりん地区(釜ヶ崎)」についてさらに興味が湧いて、森絵都の小説『この女』を読んでみた。
西成あいりん地区の日雇い労働者やドヤ街での生活がリアルに描写されており、非常に面白かった。不遇な境遇で育った男女がたくましく前向きに生きようとする姿勢が素晴らしく、最後の場面は胸が熱くなった。この小説で登場する「天王寺動物園」もいつの日か訪れてみたい。